2017年05月07日

9年ぶりの開催! 鳥肌モノの『逆転裁判』15周年記念オーケス

文・取材:ライター 本間ウララ

●成歩堂龍一役の近藤孝行さん、御剣怜侍役の竹本英史さんも登場
 2017年5月6日、上野の東京文化会館大ホールにて『逆転裁判』の15周年を記念したオーケストラコンサートが開かれた。コンサート開催は、2008年以来の9年ぶり。会場は5階席まであり、客席はコンサートを待ち望んでいたファンでびっしり埋まっていた。

 シリーズの名曲を演奏するのは、9年前も名演を聴かせてくれた東京フィルハーモニー交響楽団、指揮は栗田博文氏。さらに、ゲストとして成歩堂龍一役の近藤孝行さん、御剣怜侍役の竹本英史さんら声優陣も駆けつけた。

 なお、コンサートは昼の部・夜の部の2部制となっていた。本記事では昼公演の模様をお届けしよう。


●まるでミニ特別法廷! “生”の開演前アナウンス
 客席に諸注意を伝える“陰アナウンス”を、なんと近藤孝行さんと、竹本英史さんが担当。成歩堂龍一と御剣怜侍が掛け合う形で、携帯電話の電源の確認などを促してくれた。このシナリオは『逆転検事』シリーズや、『逆転裁判5』、『逆転裁判6』のディレクター山崎 剛氏が書かれたとのことで、ちょっとした劇のよう。おまけに声優陣もアドリブを入れたりしていて、会場は大いに盛り上がっていた。

 とくに湧いていたのが、ナルホドくんが『逆転裁判4』の設定よろしくピアニストとして演奏する気まんまんだったところや、ミツルギが観客も巻き込む形で、非常口をニラみつけ「そこだ!」と指さし確認したところ。開演を前に、一気に客席の空気が和やかなものになった。

●フルオーケストラで辿る成歩堂龍一の軌跡
 コンサートは「成歩堂龍一 〜異議あり!」で静かな幕開け。この曲は、作曲者の岩垂徳行氏が今回のために『逆転裁判2』、『逆転裁判6』の要素も加えてオーケストラ用に編曲したもの。ステージ上のスクリーンにはゲーム映像やイラストが映し出され、『逆転裁判』1作目から『逆転裁判6』まで、ナルホドくんの歩みとともに曲が進んでいく。映像は終始流されるのではなく、要所要所でまとめられており、演奏に注目する時間もしっかり設けられていた。

 2曲目は「逆転裁判5 法廷組曲」。重厚に始まり、尋問中やユガミ検事のテーマへと移り変わっていく。途中、指揮の栗田さんが足をドンと踏み鳴らし、奏者のみなさんが「待った!」、「そこだ!」、「くらえ!」と叫ぶ。さらには栗田さんが客席を向いて「異議あり!」と指揮棒をつきつけ。これには客席もビックリ、うれしいサプライズに拍手が鳴り響いた。そこから「追求〜追いつめまくれ」へなだれ込み、ステージはますますヒートアップ!

●トークコーナーでキャストが語る10年
 続いては近藤さんと竹本さんによるトークコーナー。近藤さんは黒のスーツで、竹本さんは白のスーツに赤いシャツと、ビシッと決めて登場。おふたりは2005年の特別法廷(東京ゲームショウで公開される映像)からボイスを担当されているが、今回のコンサートで思い入れのある曲を聴き、グッとこみ上げるものがあったそう。

 また、後の第2部でも『逆転』シリーズの江城元秀プロデューサーも交えてのトークタイムがあり、ここでも近藤さんは「逆転姉妹のテーマ」を聴いて涙腺が緩んでしまったのだと語った。竹本さんは、「逆転検事組曲」を王者の曲と評し、うれしさもひとしおの様子。そんなキャスト陣の『逆転』愛溢れるコメントに、コワモテで通る江城Pもニッコリ。


●名曲揃いの『逆転検事』組曲
 第1部の後半は、『逆転検事』のキャラクターテーマメドレー「巡り会い組曲」、ミツルギの成長を描く「華麗なる軌跡」の2曲。

 「巡り会い組曲」では、一条美雲ちゃんのテーマから始まり、サックスが聴かせるロウのテーマ、神秘的な水鏡 秤のテーマと続く。そこから一変、一柳弓彦のテーマが、ふんわりかわいらしく流れる。信楽盾之のテーマでは軽快な大人のジャズ、そしてミツルギ検事の父親・御剣 信のテーマが壮大に奏でられた。

 「華麗なる軌跡」では、“ロジックチェス”、“ぬすみちゃん”のシーンからどんどん盛り上がり、ラストの「追究 〜つきとめたくて」で高らかに響く金管の音色。ぴたりと揃う弦の音には鳥肌が立った。

●想像を絶する!? 『大逆転裁判』の音作り
 第2部は、江城Pと『大逆転裁判』シリーズのメインコンポーザー・北川保昌氏のトークから。北川さんによると、『大逆転裁判』は共同推理の楽曲から作り始められたそうで、この曲が巧舟ディレクターのOKをもらうまで2ヵ月ほどかかったのだとか。

 ちなみに、巧さんも今回のコンサートを聴きたがっていたそうだが、現在は最新作『大逆転裁判2』の制作も佳境で来場ならず。江城Pによると「いま彼は大阪で命を削って作っています」とのこと。

 また、ここで特別に『大逆転裁判2』の楽曲に使われる、タップダンスの音とモーションの収録模様が公開された。タップダンスを担当されたのは、OSK日本歌劇団の男役スター・楊 琳(やん りん)さん。映像では、カプコン本社地下のスタジオにて華麗にタップを踏む楊さんの姿や、モーションキャプチャーするシーンが映し出された。さすがスター、本当にダンスが格好いい。ダンスがゲーム中でどういった使われかたをするのかは不明だが、期待は高まるばかり。また、今回の映像には楊さんからのメッセージも。楊さんご自身も『逆転裁判』のファンで、プレイするのが待ち遠しいと目を輝かせていた。

 その後は再びオーケストラが登壇し、「大逆転裁判組曲」で開廷。アコーディオンも加わり、さきほど北川さんが大切にしたと言っていたクラシカルな19世紀の雰囲気が膨らんでいく。メインテーマから、共同推理、尋問のテーマがつぎつぎに演奏され、組曲のなかで『大逆転裁判』と追体験しているかのよう。クライマックスの最終弁論の楽曲「追求」では映像と相まって、龍ノ介の抱く勇気と希望が伝わってくるような名演奏だった。


●これぞオーケストラ! 御剣と綾里姉妹の名曲から
 つぎなる楽曲は、「大いなる復活〜御剣怜侍」。ゲーム音源でも壮大さを感じる曲だが、オーケストラとなるとさらに荘厳に。ミツルギが法廷に出たときの威圧感、気高さまでもが感じられる。一方で、映像ではミッちゃん大好き、オバチャンこと大場カオルの名シーンが流れ、観客もニヤリ。

 続く「綾里真宵 〜逆転姉妹のテーマ」に移ると、やさしいバイオリンの音色に空気がほころぶ。フルートら吹奏楽器と、バイオリンのピチカートの掛け合いがかわいらしく、まさにマヨイちゃんの曲だと実感。また、清々しいと同時に、ウルッときてしまうのは姉の千尋さんを思い起こすからだろうか。

 「逆転姉妹のテーマ」は昼公演のみの演奏で、夜公演では代わりに人気曲「ゴドー 〜珈琲は闇色の薫り」が演奏されている。昼公演を取材した記者は、当初は「ゴドー」を聴けないのが残念で仕方なかったが、この「逆転姉妹のテーマ」が聴けたことで大満足。それくらいすばらしい演奏だった。


 プログラム最後の曲は「逆転裁判1〜3 法廷組曲」。「開廷」の印象的なフレーズをコンサートマスターが奏でていく。尋問のテーマへ移ると、金管楽器が華やかに盛り立て、そこから『逆転』コンサートには不可欠な「追求〜追いつめられて」で、さらに熱くなるステージ。ゴージャスに畳みかける音が何とも気持ちいい。会場にはタクトが止まった後も熱気が漂っていた。

●アンコールはやっぱりトノサマン!
 冷めやらぬ興奮のなか、アンコールへ突入。キャラクターテーマのメドレーとなる「続・大逆転裁判組曲」では、亜双義、寿沙都、ホームズ、アイリスのテーマなどが流れた。途中、夏目漱石の映像が流れたときには、観客から笑いがこぼれていた。

 再びのアンコールでは、栗田さんが再登場する際に舞台袖からちょっと顔を出したり、引っ込んだりというお茶目な場面も。そして、演奏は「大江戸戦士トノサマン」。イロもの的な一面もあるトノサマンだが、オーケストラの手にかかると、想像以上にドラマチックに。スクリーンのトノサマン名場面集(トノサマンバルーンから、派生のトリサマンまで)とのギャップが何とも言えないおかしみを出していた。

 フィナーレでは、ゲストが再びステージに集結。近藤さんの「せーの」の合図で、観客全員が「異議あり!」と指をつきつけて、幕となった。

 ちなみに、終演後にステージ上をよく見ると、マイクがたくさん設置されていたことに気づいた。これは、もしかすると、今回の演奏がCD化される可能性もあるということだろうか……? 期待しています!


●昼公演セットリスト
成歩堂龍一 〜 異議あり!
逆転裁判5 法廷組曲(昼公演のみ)
逆転検事 巡り会い組曲(キャラメドレー)
逆転検事組曲 華麗なる軌跡
大逆転裁判組曲
大いなる復活 〜 御剣怜侍
綾里真宵 〜 逆転姉妹のテーマ(昼公演のみ)
逆転裁判1〜3 法廷組曲(昼公演のみ)
続・大逆転裁判組曲
大江戸戦士トノサマン

●夜公演セットリスト
成歩堂龍一 〜 異議あり!
逆転裁判6 法廷組曲(夜公演のみ)
逆転検事 巡り会い組曲(キャラメドレー)
逆転検事組曲 華麗なる軌跡
大逆転裁判組曲
ゴドー 〜 珈琲は闇色の薫り(夜公演のみ)
大いなる復活 〜 御剣怜侍
逆転裁判4 法廷組曲(夜公演のみ)
続・大逆転裁判組曲
大江戸戦士トノサマン