2017年05月04日

<日本国憲法70年>9条堅持を 安保法違憲訴訟・珍道さん

 元三重県職員の珍道世直さん(77)=津市=は1人で、安全保障関連法が違憲などと主張して無効確認訴訟を闘っている。行動に駆り立てるのは、幼少期の戦争体験とカトリックの信仰心。安倍晋三首相は戦争放棄などを定めた憲法9条に自衛隊の存在を明記することに意欲を示したが、珍道さんは「(9条の内容は)理想ではなく、国が歩むべき具体的な道。対立を平和的に解決するための普遍的な指針だ」と語り、9条の堅持を訴えている。

 2014年7月、集団的自衛権の行使を容認した閣議決定の違憲性を問う訴訟を起こした。15年7月に最高裁で敗訴が確定したが、その4カ月後には安保関連法の無効確認を求めて提訴した。1、2審は敗れたが「日本の武力行使に道を開いてしまう」と上告中。

 1945年7月28日、津市は米軍の空襲で市街地のほぼ全域が焼けた。6歳だった珍道さんは家族に連れられ防空壕(ごう)に駆け込んだ。爆風で開いた壕の扉の向こうに、日本の戦闘機と衝突した米爆撃機から米兵がパラシュートで降下する様子が見えた。

 逃げ惑う住民の叫び声がこだまし、市内を流れる岩田川には無数の遺体が浮いていた。その惨状が人生最初の記憶として残る。

 家族は無事だったものの自宅は全焼した。地元の進学校・県立津高校に通ったが、経済的事情などから大学には行けなかった。民間企業などでの勤務を経て、公の役に立ちたいと23歳で県職員になり、副出納長で退職するまで勤め上げた。

 「皆に仕える者になりなさい」という聖書の一節が信条だ。祖父の代からカトリックを信仰し、生後すぐ洗礼を受けた。少しでも信仰に忠実に生きられたらと、退職後は自殺防止の電話相談を行うNPO法人の副理事長などを務める。そうした活動も相まってか、名前を「よなおし」と読まれることもある。

 平和への願いに対し国際情勢は緊迫感を増す。トランプ米大統領は米国第一主義を掲げ、朝鮮半島を巡る状況も予断を許さない。「武力でなく対話など外交努力で解決しなければならない。利己的な考えでなく、他国とともに繁栄する道を探るべきだ」と憂えた。【井口慎太郎】